高山烏龍茶の技術で作る紅玉(台茶18号)の実力
新北市、三峡は高速道路で行けば台北市内から30分で行ける山合の茶処で、伝統的に中国でいう碧羅春という緑茶を作り続けてきた土地柄だ。「ここは紅茶も美味しいいと言われているから、いろいろ試飲してみましょう」と師匠は話した。
私の茶の師、Hさんは高雄県出身、敬虔な仏教徒にして、ヨガや茶道もたしなむ趣味人である。味と価格が見合ったものであれば購入し、東京土産にしようと思っていたが、到着してみて、師匠は今年の新茶(2022年もの)の碧羅春よりも、昨年冬の紅茶の出来のよさに目を丸めたのだった。
次世代の担い手が台湾茶を進化させる
三峡の茶処は低海抜で作られた茶畑が多いため、人気で高額の高山烏龍茶と比べて値段が安かった。それに甘んじることなく、個々の茶農家は改良品づくりに精を出し続けていたのが、その紅茶の味のよさにつながっていたようだ。
4月、台湾全土で初出荷となる碧羅春の新茶が出ていたが、それを押し退けHさんが高評価したのが蜜香紅茶だった。「ふくよかで甘味の広がる上品さ、何年も現場に来ていなかったから、味の進化に感動しました」とHさんはやおら携帯電話を取り出し、数人の茶飲み友達に電話をかけ始めた。
注文はあっという間に3kgを超えた。150gで1袋だから、20袋ご購入ということになる。私も思い切り数袋をいただき、ついでにティバッグも数袋いただいた。茶農家の黄さん曰く、ティーバッグと言ってもこれは質の高いものですよ、と説明してくれた。「製造工程で、摘み取った芯(ファーストフラッシュ)の部分がクズになって溜まるんです。それを集めて作ったティーバッグです。芯の部分ですから、もちろん美味しいです」
日本の技術開拓が台湾紅茶を創った
台湾のおへそと言われている埔里からさらに山間部に入ったエリア「魚池」。ここで台茶18号という品種を使った「紅玉紅茶」が作られている。これは台湾が日本に統治されていた時代から脈々と茶作りが受け継がれている土地で、日月潭の脇にある改良場で研究され、近場の茶農場で栽培されていた。
美味しいと注目を浴びるようになったのは西暦2000年に入ってから。そして日月潭紅茶、というブランドとなって、産量が少ないこともあり、高騰を続けていく。
Hさんは話す。「台湾で最高峰の茶で東方美人があるじゃないですか。高価で私も手が出ないけど、味の似ている台湾紅茶なら、私でもたしなめます。だから私は台湾紅茶支持派なの」
茶の芽を虫に咬ませる、という特殊な製法で作られる東方美人は、紅茶とは言えないが、その茶褐色の茶色から、紅茶になぞらえられることが多い。日月潭紅茶を始めとする台湾紅茶は、東方美人の第2ブランドとして、すでに市場価値を持っているのだと実感した。
★★代表的な台湾紅茶の産地★★
◆ 坪林→有機農地で作った無農薬紅茶(産量は極少)
◆ 三峡→碧羅春種の緑茶で作った紅茶(産量は限られる)
◆ 日月潭(魚池)の紅玉紅茶
◆ 阿里山高山茶系の紅玉紅茶
◆ 東海岸舞鶴の蜜香紅茶