『賞星月沐民宿(Sunday Inn)』
九份の宿シリーズ第3弾。今回ご紹介するのは、オーナーが日本語を話し、ロケーションもグッドな宿です。実はここに注目した理由はそれだけではありません。予約サイトをのぞいてみたら、口コミ評価もわりといい。この民宿のなにが宿泊客の心を捉えているのか? それも知りたくなり訪ねてみました。
分かりにくい看板……。陶器店の中にその民宿はあった!
さっそく、オーナーの鄭(ヂォン)さんに連絡し九份へ。ここで注意点がひとつ。この宿は繁華街の『九份老街』バス停よりその手前にある『九份』バス停の方が近いのです。問題は台北から出る1062番のバスがこのバス停に停まらないこと。荷物が少なければ、『九份老街』まで乗って先に老街観光をしてから、チェックインしてもいいでしょう。そうでない人は、『九份老街』から825番か788番のバスで戻るか、『瑞芳火車站』バス停で、825番か788番のバスに乗り換えるしかありません。ただそこは台湾。運転手に『九份公車站』(公車站=バス停)と紙に書いて見せれば停まってくれることもあります(笑)。ダメ元で試してみるのもいいでしょう。
ちなみに電話ができるなら、バス到着直前に鄭さんの携帯電話に連絡すれば、『九份』バス停まで迎えに来てくれます。もちろん日本語でOK。
『九份』バス停で降り、宿のある豎崎路の階段を上がっても宿の看板が見つからない。民宿名は「賞星月沐民宿 Sunday Inn」。宿があると思われるところをウロウロしていると、陶器を売る土産店の前に立っているオジさんが日本語で声をかけてきた。この人が鄭さんでした。
「宿の看板は……」と尋ねると、鄭さんは土産店の左側の壁を指さしました。そこには「Sunday Inn 賞星月沐」の看板がちょこんと貼りついていました。土産店の看板のほうが派手なので分かりにくいのと、階段の昇り降りに気を取られて見逃していました。
鄭さんのお話では、派出所からはじまる豎崎路の階段を上り、この宿まで57段。さらに宿から有名な映画館「昇平戯院」のある九份のメイン広場まで57段。要するに、この宿はちょうど真ん中にあるということです。
フロントは陶器店の奥。鄭さんが奥にいる場合は、陶器店の店員さんに「Check Inn」と声をかけ、中へ入りましょう。フロントに入ると、そこはまるで民家の居間のよう。以前はここに人が住んでいたのだとか。民宿にする際も、ここはあまり改装しなかったそうです。古い調度品が雑然としていますが、ローカル感があり、慣れてくると妙に落ち着く空間です。
2年前に民家を改装 清潔な客室と絶景の屋上テラス
フロントを抜け、階段を上がっていくと、客室があります。
鄭さんいわく、以前は九份老街入口のにぎやかな場所で民宿をしていたそうですが、人通りが激しく、騒々しかったので、2年ほど前に静かな環境のこちらに引越し、民家を宿用に改装したそうです。だから部屋は新しく、清潔でした。部屋の種類は、デラックスダブルルーム(シービュー)2室、2~4名用のツインルーム(シービュー)1室、ファミリールーム1室と、全4室。値段は1室1万円前後で朝食付き。
この宿は、鄭さんと2人の娘さん家族の自宅にもなっているので、生活感?もたっぷり。洗濯機も置いてあり、宿泊客も使ってもいいそうです。
さらに上に行くと屋上テラスがあります。このテラスがこの宿の自慢。オープンな空間で、見晴らしも抜群! 天気がいい日なら、ここでマッタリ過ごすのもいい。夜景を見ながらロマンチックに一杯、なんてこともやってみたい。
また、階段が続く豎崎路も見下ろせるので、観光客たちが上り下りする姿をのんびり眺めることもでき、ちょっと優越感(笑)。
Wi-Fi環境はどうか尋ねてみると、「テラスのある階にもルーターを置いているのでバッチリですよ」と、なぜかドヤ顔の鄭さん。
ちょっと残念だったのは、テラスにあるテーブルやイスの老朽化が目立っていて、お世辞にもきれいとはいえない状態……。せっかくの絶景テラスなので、改善を強く望みます!
目の前の豎崎路の階段を上れば、数分であの有名な「阿妹茶樓」が。ここでも食事はできますが、実は食事なら「阿妹茶樓」のチョット上にある「阿芋蕃薯」が私のおすすめです。入口が洞窟になっているこの店は、景色もすばらしく、おいしい台湾家庭料理がいただけます。
老街の飲食店は、夜9時頃になると閉まる店が多いのですが「阿妹茶樓」(8:30〜24:00、金曜〜翌1:00、土曜〜翌2:00)や「阿芋蕃薯」(9:30〜翌1:00)は遅くまで開いているので便利。夜は観光客がいなくなるまで老街でゆっくり過ごせ、しっとりした町並を味わいながら階段を下って帰れる。その点もこの宿のいいところです。
絶品ローカル朝食と素朴なおもてなしが私のハートをわしづかみ!
あまりおしゃべりというタイプではないのですが、宿の日常について鄭さんに聞いてみました。
オーナーの鄭さんは、ほぼ1日中宿にいるそうです。土日はけっこう忙しいようですが、平日はそれほどでもなく、日本人のお客さんが来る時は、到着時間がとても気になり、宿で待ち受けているようです。
宿泊客は宿に着くと、だいたいは荷物を下ろし、まずは宿でひと息。鄭さんは土地に不慣れなお客さんの質問にも丁寧に答えているそうです。時間が早ければ金瓜石の散策をすすめたり、午後を過ぎていたら九份の街が2〜3時間で回れることを伝え、近辺のおすすめ店を案内するそうです。
外出した人たちが戻ってくるのは、だいたい食事後の20〜21時ごろ。そんな時間を見計らうように、鄭さんは宿の前にある大木がある庭の石卓に座り、烏龍茶を入れて待っているのだそうです。歩き疲れたお客さんは、鄭さんから「お帰りなさい」という感じで、お茶を飲みながら、ほっこりタイムとなります。たまに隣家の人が飛び入りでお茶菓子のおすそ分けがあったりして、地元の人達との触れ合いもあるのだとか。日本語ができるだけに、お客さんも気軽に鄭さんと話ができるのでしょう。物静かで、押しつけがましさのない人柄に、惹かれてしまうのは私だけではないと思いました。
「日本のお客さんはだいたい早起きして近くを散歩した後、ピッタリ8時に朝食を食べるんですよ」
と朝食もご自分で用意する鄭さんは、日本人の規則正しさにビックリしていました。
その朝食はフロントの脇でいただきます。ここでもさらにローカル飯体験が待っています。個人的には、この朝食はかなりの高ポイント。主食は、お粥、肉まん、トーストから選べ、どれも食べ放題! とくに基隆の名店から取り寄せるという肉まんがおすすめです。魚丸スープ、卵焼き、野菜炒めと、盛りだくさんなので、朝からお腹いっぱい。
フロント横には無料のインスタントコーヒーが用意してあり、セルフでいつでも飲むことができます。サーバーのお水も自由にペットボトルにつめかえOK。
最後に、この宿は「オシャレなデザイナーズホテル」ではありませんが、ローカルっぽい雰囲気が好きな人なら、きっと気に入ると思います。
部屋数は4つと少ないですが、立地もいいし、なにより鄭さんの素朴で自然体のおもてなしに暖かさを感じました。高評価なのもうなずけます。
【ホテルデータ】
賞星月沐民宿(Sunday Inn)
住所:新北市瑞芳區豎崎路20-1号
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電話:091-1447770(Mr.鄭)
【ホテルへの行き方】
バス停『九份』(『九份老街』バス停の手前)から、進行方向に約30m、右手に派出所(向かいに「三猫小舗」という雑貨店あり)が見えたら、右折し豎崎路へ。階段を約10m(57段)上がると、左に「本町陶館」という店があり、その中にある。
※基隆客運1062番のバスは『九份』バス停には停車しないので、『九份老街』で下車し、825番か788番のバスで戻る(『九份』まで15元)か、「瑞芳火車站」バス停(1062番で台北市内から80元)で、825番か788番のバスに乗り換える(『九份』まで15元)。荷物が少なければ、『九份老街』で下車し、老街を回ってから豎崎路を下りていってもいい。
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