最近、台湾人の知人に食事をしようと誘われると、場所が和風の「居酒屋」になっていることが多くなった。掘りごたつ風のテーブルを囲み、串焼きに皿うどん、刺身がならび「梅酒でも飲む?」なんてことになる。
かたや日本人向けのキャバクラが並ぶ林森北路。日本人が多いことから、寿司屋や居酒屋も多いのだが、数年前まで日本人率が半数以上だった和食店が、たまに入ってみるとほとんど中国語しか聞こえない。すでに台湾人に占拠されていたのか、ということも珍しくなくなった。
そんなふうに眺めていると、これまで台北市内の中心部にしか密集していなかった和食店が、郊外のベッドタウンに何軒もオープンするなど、日本食のすそ野がずいぶん広くなった感が強い。
鉄板焼き、しゃぶしゃぶ、炭火焼肉、トンカツなど、グルメ都市・台北はこれまで日本のB級グルメを取り入れ、流行を作り出してきた。それらの店は街並みになじむほど、すっかり定着している。新しいところでは、カウンター席で座る「焼き鳥」店が珍しさもあり、急激に増えた。
が、飽きっぽいというか、飽くなきグルメを追求したがる台湾人たちは、次なるブームを仕掛け続けている。そんな流れからメインストリームになりつつあるのが「らーめん」。
これまで、ラーメン店がなかったわけではない。が、「麺」というのカテゴリーが台湾人にとっては「B級グルメ」であることから、単価が安く、チェーン店の「寿がきや」「味千」などが100元(約300円)前後の単価でようやくやっていける程度だった。その後、「一番亭」「花月」などが、カフェのような内装と、セット料理で付加価値を出すスタイルで若年層を取り込み、ヒットしたのが数年前。
が、今回のブームはいままでのとはちょっと風向きが違う。例えば中山北路1段の目抜き通りに今年オープンした博多ラーメンの人気店「一風堂」。開店後、すでに半年が経過するが、相変わらず店の前は入店を待つ客で埋め尽くされている。
天井の高い、すっきりした店内、ハツラツしたスタッフたち……そのオシャレ度の高さに、一度は行ってみたくなるようだ。豚骨ラーメン一杯200元だが、居酒屋のようなサイドメニューも多く(台湾側のパートナーが焼肉店経営だから?)、明らかに日本のラーメン屋にはない、トレンディなお店に変身しているのだ。
さて、この沸騰ぶりに呼応したように、若者が集まるエリアMRT忠孝敦化界隈には「山頭火」「屯京」「鷄華」「旺來」といった、これまで台北に進出していなかったラーメン店が立て続けにオープン。どこも1時間待ち、といった盛況だ。
これまでは。台湾人になじみのある「豚骨」味の店ばかりだったのに対し、新店舗は北海道発だったり、鷄ガラのクラッシックな味の店だったり、お店のカラーにバラエティが出てきて、客の選択肢が多くなったのはうれしいこと。
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が、長い目で見ると、当初は日本の技術者が指導した味のクオリティが、守られるのだろうか、という心配もあったりする。台湾人には難関の「味噌味」「海鮮だし」「つけ麺」などが受け入れられるのか、というのも注目されるところだ。