【バス旅DATA】
路線:台灣好行 北投竹子湖線 小9(捷運北投站-竹子湖)、大都會客運 紅5(陽明山總站-捷運劍潭站(基河))
乗車ルート・運賃:台灣好行北投竹子湖線 小9(北投捷運站→竹子湖)15元/1回、大都會客運 紅5(陽明山總站→文化大學)15元/1回
所要時間:1日(観光時間含む)
※運航時間・運賃・路線は変更される場合があります。
【バス旅ポイント】
①昼も夜も絶景レストランで食事が楽しめる!
②春に行くなら、竹子湖の美しい海芋が見られる!
③蒋介石の別荘『陽明書屋』がシブイ!
④陽明山周辺は、天気は変わりやすいので折りたたみ傘は必須!
⇒ 台北市バスの概要
『草山行館』で絶景を見ながら優雅にランチ
MRT北投站から台灣好行 北投竹子湖線の小9のバスに乗り、台北の人気ハイキングスポット、陽明山(ヤンミンシャン)へ向けて出発。バス停にはリュックを背負ってスニーカーを履いた人たちがたくさん待っていたので、てっきり一緒のバスですし詰め状態で行くのかと思っていたら、この人たちはどうやら違うバスを待っていたようだ。座席につくと、台灣好行 北投竹子湖線のバス停名が記されたヘッドカバーがかけられていた。分かりやすい。平日は台灣好行(土、日、休日のみ運行)ではなく、大南汽車の小9のバスになるため、停留所がかなり増える。
北投の街を抜けると、バスはどんどん山の中へ。途中で、その街に住んでいると思われるお年寄りの方々が下車していく。最初の目的地に着いた。下車したバス亭の陽明山立體停車場(草山行館)は陽明公園の駐車場だが、すぐ『草山行館』(台北市北投區湖底路89號)の看板があり、坂を下って行くと建物が見えてくる。ここは蒋介石が初めて台湾に来たときに半年間だけ住んだ場所。その後は端午節や中秋節にも訪れたそうだ。2007年に火災で焼失し、今の建物は再建されたもの。当時の『草山行館』と緑の文字で書かれた木の看板、蒋介石の銅像は残ったものの、銅製の像は焼けたせいで黒くなってしまっていた。今もそのままのものが館内に飾ってある。
入口付近が『草山行館』についての歴史や芸術品の展示、奥に行くとレストランや蒋介石が当時着ていた礼服や軍服のレプリカ、その当時の写真などが飾られている部屋がある。ちょうどランチの時間だったので、私たちもこの景色抜群のレストランで食事をすることにした。私と友人は無錫排骨(488元)と蔥油嫩雞腿(588元)がメインになったセットをひとつづつオーダーし、シェアしながらいただく。前菜からスープ、デザート、飲み物までついており、優雅なランチができた。このレストランで食事をすると、箸袋を用意してくれ、使用したお箸はお持ち帰りができる。思わぬ記念品に。次のバスがもうそろそろ来るので、急いでバス停へ。
初めてみる海芋は想像以上に美しかった!
次は一気に終点の竹子湖まで行く。竹子湖に咲く海芋(ハイユー)がきれいだと、いろいろな人から聞いていたが、自分の目で見るのはこれが初めて。しかし、海芋の時期は終わりに近づいてきている。通常見頃は3月〜5月初旬といわれている。実際にどれだけの海芋を見られるのか、もしかしたら全然ないのかもしれない……、と期待と不安が入り混じっていた。竹子湖のバス停に着くと多くの人の姿が見えた。みんな海芋お目当てだ。これだけ人がいるなら、きっとまだ海芋が咲いているんだ! 急にうれしくなり思わず笑みがこぼれた。空を見上げると雲の流れが異様に速い、さっきまで見えていた青空がどんどん雲に覆われていく。「雨よ降らないで!」と心の中で祈り、先へ進む。
以前は海芋のみだったようだが、近年はアジサイも栽培するようになった、とは前を歩いていた人の会話。すると、まばらに咲いたアジサイ畑があった。それを横目で愛でながら先に進むと、日本昔話に出てくるような段々畑にたくさんの海芋が! とにかく早く近づきたくて小走りになっていた。近くで見ると、ここ数日続いていた雨のせいか、枯れてしまっているものも多い。それでもたくさんの海芋を見られたことに大感動。真っ白な花は本当にきれいだ。竹子湖のメイン通りを歩き、ほかの海芋畑も見に行く。その通りから少し中に入ったところにある農園では、大学生のグループが海芋摘みをしていた。男の子のひとりが畑のぬかるみの中に入って、ほかの子が指差す海芋を摘むのを、周りの学生たちが面白がって応援していた。周辺にある農園では入園料を払えば5本までとか、カフェ併設の農園なら飲食をすれば摘んでもOK。でも泥まみれになるかも。
海芋を思いっきり堪能したので、次の場所に移動。バス停に戻るとまたしてもすごい数の人、人、人。「こんなに乗れないかもしれない」、と思いながらバスを待つ。バスが到着すると、我先にと人が押し寄せた。後から来た人が割り込もうとすると、先に並んでいた人たちが「並んでいるのよ!」と怒鳴る。大声でハッキリ注意するのも台湾らしい(笑)。なんとか乗り込み、グッとつり革につかまりながら、クネクネの山道を下っていった。
旅の神様がほほ笑んだ蒋介石の別荘『陽明書屋』
「どんなところなんだろう?」とネーミングが気になり降り立ったのは、陽明書屋バス停。看板はあるがあたりを見回しても建物が見当たらない。とにかく歩いてみることに。するとまた看板が。どうやらまだまだ歩かなくてはならないようだ。何もない道路をどんどん下る。途中下車したことをちょっと後悔もしたが、ここまで来たからには、意地でも行かなくてはと思い、重たい足を進めた。
15分ほど歩いただろうか。やけに遠く感じたが、『陽明書屋 遊客服務站』と書かれた門が見えてきた。あまりにも閑散としていたので、もしかして今日は休み? と思いながら中に入ってみた。受付の人に団体客の予約があるので、本日は見学できませんと言われ、がっかり……。個人の場合は9時か13時30分から見学ができるのだが、60人もの団体予約があるため今日は無理なんだそうだ。歩き疲れ&ショックで顔がよほど悲しそうに見えたのか、なんと、見せてくれると言ってくれた! しかもラッキーなことに、ちょうど日本語も話せるボランティアガイドの方もいるとのこと。一旦落としておいて、持ち上げる。今日の旅の神様はなかなか演出上手。疲れなんか一気に吹き飛んだ。
日本語ガイドは林(リン)さんというご年配の女性。まずは受付の後ろ側にある展示室の方を案内してもらった。1923年、昭和天皇が皇太子殿下のとき、ここをご訪問なさったことや、陽明山は火山ということなど、歴史などについての説明展示がしてある。それを見終えるとメインの蒋介石が別荘として住んでいた『陽明書屋』へ。入口のすぐ横にある道路を経て、少し広くなった場所がヘリポート。何かあったときにはすぐにヘリコプターで移動できるようになっていたそうだ。
とうとう雨が降り出した。林さんと私たちは傘をさして移動。立派な門が現れた。門から反対側にも延びる道路があるが、それは蒋介石しか通ることが許されない道路だったという。荘厳な空気を感じながら、中へ入っていく。入るとすぐに中庭があり、そこにはかなり高く伸びたモクセイの樹があった。花の香りがよく、賓客を迎え入れる際の歓迎の意味で植えられたものだそうだ。一つひとつの家具にも歴史が感じられる。2階には陽明山の山々が望める部屋にダイニングテーブルが。ここで妻の宋美齢と一緒に、お茶飲んだり、食事をしたという。60歳を過ぎてから絵を習いはじめた宋美齢のアトリエもあった。その奥には蒋介石と宋美齢それぞれの寝室としゃれたバスルームが。有名な歴史上の人物のふたりがここで生活していたかと思うと、緊張感にも似た感動を覚えた。家屋を見学し終わり、外へ。来た道とは違う道を案内しますと言われ、森の中へ。人が通れる小道がある。蒋介石夫婦もよくここを散歩していたのだとか。ネーミングに惹かれただけの動機だったが、来てよかったと思った。
日本語のガイドの林さんが「私も帰るから〜」とのことで一緒にバス停まで歩くことにした。林さんは今年からシルバー割引が使えるようになったのよ、と言いながら、少し登り坂になった道をスタスタと歩く。私たちは彼女についていくのがやっと。そんな歳だとは思えないほど若々しい。週に1回、ボランティアとして『陽明書屋』に行っているそうで、今日会えたことは本当にラッキーだった。バス停でバスを待つが、なかなか来ない。すると、1台の車が私たちの前で止まった。乗っていたのは林さんの仲間で、ほかの場所でボランティアとして働く陽明山国家公園の人たちだった。「一緒にどうぞ!」と言ってくれたので、お言葉に甘えて途中まで乗せてもらうことに。陽明山總站のバス亭まで送ってもらい、林さんたちと別れた。素敵な夜景が見られる人気のレストラン・バーに行くため紅5のバスを待つ。
最高に美しい夜景を最高におしゃれなレストランで
紅5のバスは大型だった。バスに乗り込みふと振り返ると、登山の話題で楽しそうに盛り上がる人たちがいた。途中からは、学生が乗ってきた。「もうそろそろかな?」、と窓から外を見て確認し、文化大學バス亭で降りた。
『THE TOP 屋頂上』(台北市凱旋路61巷4弄33号)の小さな看板は見つけたものの、雰囲気的に遠い気がした。歩いていた人たちに道を確認しつつ、かなり歩いたところで山の上に文化大學が見えてきた。その前に広がるのは台北の街を見下ろす絶景! その頃には雨も上がり、風も吹いていて気持ちよかった。そこから『THE TOP 屋頂上』のエントランスも見えた。坂を下って受付で席があるか確認。週末だったので待つのを覚悟していたが、時間的に少し早かったのですんなり入れた。ここはオープンしてすでに10年。台北でも屈指の夜景が美しいレストラン・バーとして有名なスポットだ。
ヤシの木に白いパラソルの付いたテーブル、ガラスに囲まれた個室もある。山の傾斜を利用して、屋外のフロアは階段状になっていて、段差ごとに席が設けられている。いちばん下の段はソファー席になっていた。席に案内され、2人用のバーベキューセットをオーダー。料理が運ばれてくるまでは、上に行ったり、下に行ったりして日が暮れてくる景色や店内の雰囲気を楽しんだ。ほかのお客さんも同じように行ったり来たりし、スマホで撮影したりしている。みんなすることは同じだと思うと、なぜか急に笑えてきた。
七輪が運ばれ、続いてエビやホタテなどの海鮮と豚肉や鶏肉、野菜が来た。そして石焼ビビンバまで来て、こんなに食べられるかな?と不安に。実は、オーダーしたとき、景色に夢中になり、メニューの内容をちゃんと見ていなかったのだ。でも、ゆっくり食べていれば、陽もどんどん沈み、その分夜景を長く楽しめる。お酒だけじゃなく、今日は夜景にも酔うのだ、と心に決め、友人と2人で雨上がりの台北の夜景を存分に楽しんだ。