【バス旅DATA】
路線:大南汽車223(關渡站-青年公園(國興))
乗車ルート・運賃:捷運西門站→南機場公寓 15元
所要時間:3時間(夜市散策含む)
※運航時間・運賃・路線は変更される場合があります。
【バス旅ポイント】
①バスの路線、本数が多い!
②台北でも大人気の水餃子店がある!
③小規模夜市なので、コンパクトに回れて疲れにくい!
⇒ 台北市バスの概要
名物餃子店を目指し台北の下町へ
「観光夜市」と名のつく定番の有名夜市と違い、食事する屋台群がメインになった小さな夜市が台北市内には数多く点在しているが、私が以前から気になっていたのが、『南機場夜市(ナンジーチャンイェスー)』だ。MRT西門站の南に位置するが、かなり駅から外れた場所にあり、台北っ子はバイクかバスで行くのが一般的。だから旅行者にもあまり知られていないし、知っていてもアクセスが不便なので行く人は少ない。だが、ここは台北っ子には人気の夜市だ。その理由はこの夜市の名物になっている絶品の水餃子があるから。それ以外にも、ここにはおいしい屋台が多いと地元では評判なだけに、バスに乗って行ってみることにした。
バスでいくならMRT西門站からが一番便利だ。この駅からは、いろいろな方面へ行くバスが発着している。中華路一段の大通りを挟んで、駅周辺にはバス停がA〜Kと11ヵ所もある。幸い駅の出口を出た所には、バス停マップがあるので、事前に調べておいた路線223が発車するバス停を探す。目的のバスは出口2または3近くのCのバス停だ。降りるバス停は南機場公寓(ナンジーチャンゴンユー)。
路線223は比較的ひんぱんに運行しているが、12、212、250も南機場公寓に停車する。これらのバスは、戻りもそれぞれ西門站に行く。212なら西門站経由で台北車站にも行くので、どちらでも下車が可能だ。西門站から南機場公寓バス停までは10分ほどで到着。バス停の周辺は下町っぽい、ローカル色満載の雰囲気がただよっている。バス停の向かいの路地はやや狭く、食堂などがひしめいている。メイン通りの中華路二段をバスの進行方向とは逆に50メートルほど歩き、最初の路地(中華路二段307巷)を右に折れると、少し向こうの方に、ひときわ明るく光る夜市のゲートが見えた。周りの人たちも吸い寄せらるように、同じ方向へ歩いている。
ゲートの前に立つと、すでに多くの人が夜市のメイン通りにひしめいている。背伸びをして奥を覗くと、屋台がびっしり! まずはひと回りしてみる。入口右角には、いかにも台湾らしい魯肉飯やビーフンを出すお店がある。少し奥へ進むと、左手には派手な感じのフルーツジュースの屋台が。さらに台湾B級グルメの王道「滷味(ルーウェイ)」の屋台や焼トウモロコシの屋台などが現れる。行列ができているのは『好吃炸鶏(ハオツーザーチー)』の看板を出した屋台。炸鶏(ザーチー)とは、平べったい大きなチキンの唐揚げで、街中や夜市ではよく見かける料理。ほかにも炸鶏の屋台はあったが、ここは人気店のようだ。さっそく1つ買ってみる。手のひら2つ分ほどもある大きさに驚く。臭豆腐屋台も数店あった。蒸した清蒸臭豆腐のお店が多かったが、臭いがキツイので、外国人には、揚げた炸臭豆腐の方がおすすめかも。
人気水餃子店は、殺気すら感じる盛況ぶり
そろそろお目当ての絶品水餃子の店『來來水餃館(ライライシュェイジャオグァン)』に向かうことに。この店は、メイン通りから最初の1本目の路地を右に曲がった奥にあった。店先にテーブルをずらりと並べたお店で、19時ころに到着したが、席はすでに地元の人でいっぱい。営業時間は17時〜23時30分と書かれていたので、19時はピークタイムなのかもしれない。
「注文は席が決まったらね!」と早口で言われた。が、満席。このために来たのだから待つしかない。するとラッキーなことに、5分ほどで目の前のカップルが席を立った。速攻で席を確保! ところが、オーダーしたいのだが、とにかくお店のスタッフはめちゃくちゃ忙しそう。店全体がちょっと殺気立っている。座っていては一向にオーダーできそうにもないので、席を立って(友人が席をキープ)店員を無理矢理つかまえ、韮菜水餃(ニラ)と白菜水餃(ハクサイ)を10個ずつと酸辣湯(中)を1つオーダー。ちなみにここの水餃子は10個からのオーダーが原則。店の入口前では、店員たちが水餃子をリズミカルな動きで素早くつくりあげていく。出来上がった生の水餃子は、すぐ横にある大きな釜に豪快に投じられる。ゆで専門の店員が、これまた手際よく次から次へと皿に盛り付けていく。
注文してから餃子が来るまで、やや時間がかかるので、このパフォーマンスを楽しみながら、さっき買った炸鶏を食べることにする。台湾の夜市は、基本的にテイクアウトしたものを別の店で食べても怒られないのだ。この店はビールがないので、飲みたいならコンビニなどで購入しておけばいい。
15分ほど待たされたが、ようやく水餃子と酸辣湯がやってきた! プリプリッとして光輝いている水餃子。食べていた炸鶏を引っ込め、いざ実食。ひと粒はそれほど大きくはなく、熱くなければひと口でもいけそうだが、酢醤油をつけて半分ガブリ。皮は厚すぎず、餡は肉と野菜のバランスがよく、確かにおいしい。酸辣湯も控えめな酸味と味付けでなかなかいける。店員たちのパフォーマンスを眺めながら、相席になった地元客に混じって餃子をほおばる感覚は何ともいえない。
今甦る給食の味……。失われた日本の味を発見!?
本当はもうひと皿水餃子を食べたかったが、ほかの料理も試したいのでここはグッと我慢。さっきよりもさらに混雑しているメイン通りを歩く。「日式炸猪排(リーシーザーズーパイ)」……、トンカツの屋台のようだ。今でこそ、日本のトンカツ店が台北のあちこちで出店しているが、トンカツ屋台は珍しいので、咖哩猪排飯(カツカレー)にチャレンジしてみた。そのお味は……、給食のカレー。40代中盤以降の人しか分からないかもしれないが。よく言えば懐かしい、悪く言えば粉っぽくてコクとパンチがない。「日式(日本風)」を標榜するにはビミョーだが、ある意味で失われた日本の味がここにはある、ということなのかも。先ほどの餃子屋で食べ残していた炸鶏もついでに平らげる。ペッパー風味のジャンキーな味が、パンチのないカレーの味を補ってくれた。
ゲート近くの台湾料理屋台も気になったが、実は炸臭豆腐も最初に歩きながら食べていたので、正直お腹がキツイ。最後に何かデザートがほしい。かき氷、回転焼き(今川焼き)などもあったが、脂っぽいものが続いたので、さっぱりと果汁屋台の総合果汁(ミックスジュース)でシメにした。
日本統治時代、松山空港(北機場)に対し、軍用の飛行場があった場所として地名が残るこの南機場は、南側の練兵所が現在は青年公園となっていて、すでに飛行場としての面影は残っていない。戦後は中国大陸からの移民が大挙移住して、今の住宅街になったようだ。この夜市がにぎわう様子は、その移民パワーの名残なのかもしれない。