【バス旅DATA】
乗車ルート・運賃:捷運忠孝復興站(臺北市)→金瓜石(勸濟堂) 109元
金瓜石(勸濟堂)→金瓜石(黄金博物館) 15元、金瓜石(黄金博物館)→九份老街 15元
乗車時間:1日(観光時間含む)
※運航時間・運賃・路線は変更される場合があります。
【バス旅ポイント】
①『黄金神社』台湾では数少ない日本統治時代の鳥居が見られる!
②お土産にも最適の「礦工便當」は必食!
③九份老街のひやかし散策が楽しい!
④情緒と混沌の同居が九份の魅力!
⇒ 台北市バスの概要
終点の金瓜石では巨大な関羽が待っていた
久しぶりに九份(ジュウフェン)に行きたくなった。最後に行ったのは3年前。今回で4回目だ。超定番観光地だが、なぜか九份にひかれる。景色も雰囲気も好きだし、行くと楽しいのだ。特に老街をぶらぶらしていると心が躍る。
九份へはバスで行くのが一般的だが、台鐵台北車站から列車(自強號、莒光號など)に乗って、瑞芳火車站まで行き、そこからバスというルートもある。鉄道も乗りたい、という人はこのルートをよく使う。実は過去3度九份に行ったが、その先の金瓜石(ジングアーシー)には一度も行ったことがなかった。今回は終点の金瓜石まで行くことにした。
台北からの九份・金瓜石行きバスは、MRT忠孝復興駅2番東側出口(復興南路一段側)を出て、右にある「捷運忠孝復興站」のバス停から出発する(訪問時は以前のバス停「瑠公圳公園」から乗車したが、2017年4月に現在の場所に移転。バス停の場所はこちら)。
バスは約20分遅れで到着し、15人ほどの乗客が一緒に乗った。平日の朝8時30分。このバスは途中台北市内のいくつかのバス停に停車するので、通勤に利用しようと思えば使えるのだが、通勤客風の人はいない。みんな九份か金瓜石へ行くと見えて、車内は何となく行楽ムードが漂っている。
出発してから約20分。饒河街觀光夜市やMRT松山車站を通り過ぎ、中山高速公路に入った。高速を下りると基隆河沿いを走る。さっき台北市内で見た基隆河よりも川幅が狭くなっていて、山も近い。街も山間部の村といった感じだ。瑞芳車站を過ぎると、しばらく線路沿いを走り、やがて登り坂に入っていく。クネクネと曲がる道からは、基隆港の美しい景色が見え隠れする。天気もよく海がきれいだ。
9時40分、バスは九份老街バス停に止まった。ここでほとんどの乗客が降りてしまった。外にはすでに多くの観光客が歩いている。バスには私と中年の夫婦らしきカップルしか乗っていない。次の黄金博物館でそのカップルも降りてしまい、乗客は私1人になってしまった。終点の金瓜石(勸濟堂)には9時50分に到着した。台北を出て1時間20分。降りると観光客は誰もおらず、ひっそりとしている。ここには1896年に建立された『勸濟堂』という関聖帝君(関羽)を祀っている立派なお寺がある。せっかくなので、拝観してみる。
巨大な関羽の銅像がやたらと目立っている。商売の神様ということなので、商売繁盛を祈願しお寺を出た。九份とは対照的な『勸濟堂』だが、休日などはもっと人が多いのだろう。ただ、ここから眺める景色も悪くない。九份からの景色とはまた違った魅力がある。穴場を発見したようで、ちょっと得した気分だった。参拝をしたらあとはすることがないので、次は『黄金博物館(ファンジンボーウーグァン)』に行くことに。
神社跡で出会った赤いドレスと思わぬ収穫「礦工便當」
中年カップルが降りた金瓜石(黄金博物館)バス停には5分ほどで到着。『黄金博物館』の中に入ると多くの観光客がいた。九份ほどではないが、ここも人気の観光スポットだ。金瓜石は19世紀末に金鉱が発見され、日本統治時代に本格的な鉱山開発を行い、東アジア屈指の鉱山として大いに栄えた。黄金博物園區と呼ばれる敷地内には、この博物館のほかに、当時の日本家屋を再現した「四連棟」や坑内体験、採掘体験、郵便局、レストランなどがあり、テーマパークのようになっている。
実は今回ここで見たいものがあった。それは『金瓜石神社(黄金神社)』だ。日本統治時代に建てられた神社で、現在は鳥居だけが残っていると聞いた。太平洋戦争の敗戦後、台湾にあった日本の神社は国民党によって鳥居も含めほとんどが破却されたが、ここは鳥居が残る数少ない神社跡なのだ。神社跡は山の中腹にあり、そこまではちょっとした山登りになる。
石の階段の参道を汗だくになりながら登る。石灯籠が見えた。さらに先に進むと石造りの鳥居がポツンと佇んでいる。しかしさらに上を見上げると、石垣のようなものがあり、そこにも鳥居が見える。どうやら本殿跡のようだ。登ってみると石づくりの鳥居と柱が立っていた。何とも寂しい状態だったが、そこで真っ赤なドレスとタキシードを着た台湾人の若いカップルが結婚写真の撮影をしていた。景色はいいし、まぁ、見ようによってはギリシャのパルテノン神殿の超縮小版のように見えなくもない。きっと結婚写真の人気スポットなのだろう。それにしてもあのドレスで、よくここまで登ってこられたもんだ、と神社跡よりも、そちらの方が印象に残った。
神社跡を見たあとは、敷地内にあるレストラン『礦工食堂 Miners Cafe & Restaurant』でランチを。日本語メニューもある。ここの名物は「礦工便當(鉱夫弁当)」らしいので、それを注文。オリジナルのふろしきに包まれ、結び目には竹の箸が刺してある。そしてステンレスの弁当箱の中には、台湾ではお馴染みの排骨飯(パイコーファン)。ミネラルウォーターも付いている。弁当箱やふろしき、お箸は持ち帰っていい。台鐵の駅弁の弁当箱を3つも持っている弁当箱マニアの私としては、思わぬ土産だ。これで290元は安い。しかもうまい!
初の金瓜石は予想以上に充実した時間を過ごせた。いい気分で九份行きのバスに乗る。
人をかき分け食べ歩く九份老街の「ひやかし散策」
九份老街の入口は、午前中バスから見た以上に人でごった返していた。平日なのにこの人出は、さすが人気の観光地だ。
老街を歩いてみる。両脇にはお菓子や食堂、土産物店がズラリと並んでいる。3年前とさほど変わった様子はない。「花生捲+冰淇淋(ファシォンジュェン+ビンチーリン)」を売っている店があった。これは飴で固めたピーナッツをカンナで削り、その粉をクレープ生地に敷き、その上にアイスクリームをのせ、クルンと包んだスイーツだ。台北市内では見たことはないが、九份老街では数店あり、もしかしたら九份の名物スイーツなのかもしれない。以前これを食べてファンになった私は、即購入。弾力のあるクレープ生地に、ピーナッツの香ばしさと甘さを抑えたアイスの相性がよく、食べ歩きにもいい。
人をかき分けながらいろいろな店をひやかす。夜市なんかもそうだが、この「ひやかし」が楽しい。九份老街の店は、ひやかしにも手慣れたもので、不機嫌になったり押し売り的なこともしない。客あしらいがうまいのだ。だから楽しめる。それが九份の好きな理由でもある。魚丸湯(魚のすり身団子のスープ)の店や、手づくり下駄の店などをひやかし、九份で一番有名な賢崎路まで来た。狭い階段になっているこの道は、両側に九份のシンボルでもある赤いぼんぼりが連なり、茶藝館やレストランなどが並んでいる。夕暮れからは、ぼんぼりに灯がともり幻想的な風景に変わる。
日没まではまだ少し時間があったので、展望台近くにあるモダンなカフェ『吾穀茶糧SIID CHA』で時間をつぶす。このあたりの店は高台にあるので、どこも眺望がいい。この店からの眺めも文句なかった。
日没後、再び賢崎路に行ってみた。赤いぼんぼりに灯がともり、昼間とは比べものにならないくらい情緒ある姿に。それとともに、人の数も先ほどの倍くらいになっている。この時間帯に合わせて訪れるツアーもあるくらいなので、しょうがない。でも、ぼんぼりと店の照明、そして人の波。これがセットになってこそ九份だと私は思っている。情緒ある風景の中に混沌とした慌ただしさ。この雰囲気は、やはり九份でしか味わえないな、と改めて感じた。