【バス旅DATA】
●鉄道
路線:台灣高速鐵路
乗車ルート・運賃:高鐵台北車站-高鐵台中站 700元(片道)
乗車時間:50分
●バス
路線:彰化客運6936台灣好行鹿港線(高鐵台中站-台明將台灣玻璃博物館)
乗車ルート・運賃:高鐵台中站→彰客鹿港站 81元(悠遊カード71元)
乗車時間:1時間20分
※運航時間・運賃・路線は変更される場合があります。
【バス旅ポイント】
①台湾新幹線に乗れる!
②台湾最古の媽祖廟「鹿港天后宮」がある!
③鹿港の古い街並みを散策!
④鹿港ならではの小吃・芋丸を食べるべし!
⇒ 台北市バスの概要
プロローグは台湾新幹線で列車の旅から
鹿港(ルーガン)に行くには、まずは高鐵(台灣高速鐵路)に乗車。高鐵台北車站から高鐵台中站までは約50分の旅である。
高鐵は日本の新幹線車両700系の改良型700Tを導入しているので、あまり異国気分は味わえない。だが車内は清潔で快適。ただ平日朝8時台のせいか出張するサラリーマンの姿が多く、座席はほぼ満席。旅気分なのは私と友人だけである。持参した朝食を食べる人、スマホをいじる人、新聞を読む人、ひたすら眠る人……、日本とあまり変わらない光景だ。
台北を出た列車は高鐵板橋站へ。ここを過ぎると地上へ出て快速だと高鐵台中站まではノンストップだ。窓の外には郊外のマンション群。そして大量に走るバイクの姿。その多さが台湾にいることを感じされてくれるが、さほど感動もなく、やや盛り上がりに欠ける。
朝も早かったため朝食は車内でと車内販売を待つ。車内誌をチェックしてみると、どうやら弁当は昼と夜の限定列車でのみ販売らしい。が、パンやコーヒーはこの車内でも購入可能。イマイチ旅情感はないが、しょうがない。
ところが一向に車内販売がこない。乗り合わせた車両が悪いのか。車窓の景色はいつの間にかのどかな田園風景に変わっていた。おなかも限界。グルグルと音を響かせたそのとき、前方からガラガラとやって来たワゴン。しかし車窓が映し出すのは再びビル群、マンション群。嫌な予感は的中。あと5分もすれば高鐵台中站だ。朝食をあきらめ降りる準備をはじめる。台中まで本当にあっという間だ。でも、おなかは大きな音を立てている……。
お助けマン登場日本語を操る台湾人との出会い
高鐵台中站からは、いよいよバス旅だ。駅構内のサインに従って歩けば、迷うことなく目的の5番鹿港線バス乗り場にたどり着けた。だが乗り場の路線案内とあらかじめインターネットで調べておいた情報が異なる。バス停名が違うのだ。友人といろいろ日本語で話していると、「日本人ですか?」と、ご婦人が声をかけてくれた。事情を話すと、最近路線が少し変わったことを教えてくれた。しかし彼女も詳しくはわからないとのこと。後で運転手に確認してくれるという。さすが台湾。困ったときに必ず現れる日本語が話せる台湾人。言葉の流暢度合いはそのときどきだが、「ちょと、ちょと(ちょっと、ちょっと)」「ありがど(ありがとう)」くらいしか話せない人だって(しかもちょっと違っていたって)、困っている人を見ると、ほっておけないのが台湾人。本当に温かい。このご婦人は日本で暮らしているとかでネイティブレベル。ラッキー! 調子にのって目的地、鹿港のおすすめ店なども聞いてみるが、その辺は詳しくないとのこと。残念。
ほぼ予定時刻通りにバスはやって来た。しかし様子がおかしい。始発のはずなのに先客がいるではないか。なんでも路線変更に伴い台中市内からやって来たらしい。ともかく乗り込む。支払いは台北の悠遊カードが使えるので便利だ。しかも若干の割引もある。念のため運転手に目的地を告げて席に着く。
乗客は先客も合わせて10名ほど。旅行者、地元住民が半々くらい。心配なので運転席近くに座りたかったが、すでに空席はなし。なぜだか前方からきっちり埋まっている。仕方がないので先ほどのご婦人の後ろ、中ほどの席に座る。するとご婦人が中国語で大声を張り上げた。
「司機先生(運転手さん)、鹿港老街はどこで降りたらいいの? 後ろの日本人が行きたいそうなんだけどバス停に着いたら教えてくれるかしら? 私、先に降りちゃうから」
ある程度中国語が分かる私は、これで安心した。運転手だけでなく、車内の全員が認識したはずだ。我々が日本からやって来たこと、そして鹿港老街に行きたいこと。きっとバス停が近づいたら誰かしら教えてくれるだろう。
運将(運転手)の心温まるサービス
発車した。列車から見るより風景が近い。ほどなくすると信号で停止した。すると運転手さんがこちらへやって来て日本語版路線図を手渡してくれた。すでに案内所で入手済みだったけど、その優しさがうれしかった。シートはリクライニングできるからちょっと楽ちん。窓の外には空き地が見える。次第に商店が立ち並ぶ通りへと変わって来たころに最初のバス停「彰化火車站(彰化客運彰化站)」に着いた。ここは台鐵彰化車站の駅前バスターミナル。数人がここで降りた。親切にしてくれたご婦人ともここでお別れだ。日本語であいさつを交わし、それぞれの目的地へと進む。
景色は再び田舎の風景。田んぼ、工場、台湾らしい赤いレンガの家も見える。そろそろ到着予定時刻だが一向に止まる気配はない。少し心配になる。すると突然「ハロー、ジャパニーズ! ウェルカム・トゥ・ルーガン。エンジョイ、ありがど」
なんと我々専用のオリジナル車内放送ではないか。決まりの枠を外れたアナウンス。よくいえば自由、悪くいえば勝手。台湾語(北京語ではなく)で運転手のことを運将(運ちゃん)という。日本語が転じてそう呼ぶらしいが、運転の大将、ならば好き勝手にやってもいいか。さっきの路線図もそうだが、とにかくその心づかいがうれしい。台湾、やっぱり温かい。
鹿港天后宮参拝のあとは名物グルメを食べ歩き
彰客鹿港站で降りたのは我々のほかにも数人。ここから徒歩で老街へ向かう。地図と見比べ、道行く人に尋ね、なんとか鹿港天后宮(ルーガンテェンホーゴン)にたどり着いた。ここには航海の女神である台湾最古の媽祖が祀られている。そう、鹿港は古い街なのだ。かつて「一府、二鹿、三艋舺(一に台南、二に鹿港、三に艋舺。艋舺=台北龍山寺付近)」といわれた鹿港は、台湾第2の都市として栄えていた。街を歩けば当時の面影をいたるところで目にすることができる。立ち上る線香の煙の向こうにも……。境内では皆が真剣な眼差しで媽祖を見つめ、手を合わせ、祈りを捧げていた。台湾では老若男女問わず、信仰が厚い。私も見よう見まねで手を合わせてお辞儀を3回、旅の無事を祈る。そしてお参りを済ませて、さっそく街歩きに出かけた。
古い街らしくお宮を中心に商店が発達していて中山路、民生路には鹿港の名物を売る店が軒を連ねる。海が近い鹿港は、蚵仔煎(カキオムレツ)や蝦猴酥(アナジャコ)といった海鮮の小吃(小皿料理)が多い。ほかにも肉包(肉まん)、肉圓(肉入りだんご)、麵線糊(そうめん)、麵茶(水溶き粉茶)、牛舌餅(牛舌クッキー)などが名産で、なかでも台北ではあまり見かけない芋丸(肉入りタロイモまん)には感動! 蒸し立てのアツアツをほおばれば、肉汁がジュワッと飛び出して来た。見慣れた肉まんだけど、なんだかひと味違う。大きなセイロから取り出されたできたては、ほかほかふわふわのミルク風味の皮にギュッと豚ミンチが詰まっていた。ちょっとお行儀は悪いが道端でパクリ! 小腹を満たす絶好のおやつだ。それから、その見た目から牛舌餅と呼ばれるクッキーもひと袋購入してみる。厚いのと薄いのから選べたが、好みはパリパリの薄いの。1つ取り出して食べてみると、優しい味がしておばあちゃんの手づくり、といった印象だ。これらはどれも素朴な味わいで、のんびりとした鹿港のムードにぴったりとはまる。
迷路のような路地でタイムスリップ
民生路からレンガ敷の路地へと曲がればそこが老街。昔のままの佇まいを見せる家々、そして一部は商店として営業していた。いかにも老舗らしい風格の中華菓子店、お土産によさそうな竹細工や茶器の店。店先もさまざまで、チャイナドレスが飾られていたり、ガラス工芸の実演が行なわれていたり……。そんな店々をひやかしながら歩くのも楽しい。そして細い道の先に急に開けた空間。そこは鹿港藝文館(ルーガンイーウェングァン)で、展覧施設として開放されていた。前の広場ではアイス売りのオジサンがパブパブとラッパを鳴らし客引き中。階段に腰をかけ、しばしの休憩を取る。のんびりと走り去る自転車、一歩一歩杖を突き歩くおじいさん。そんな穏やかな時間の中に響くラッパの音は、なんだか懐かしく、遠い昔に引き戻されたように感じた。
再び路地を行き、摸乳巷(ムールーシィァン)を目指す。摸乳巷とはその名の通り、乳が触れてしまうほど狭い路地という意味だ。確かに、そこは人ひとりがやっと通れるくらい。すれ違うならばカニ歩きしながら。きっと胸と胸が触れてしまうだろう(巨乳だったら)。
鹿港は小さな街だ。徒歩でぐるりと簡単にまわれる。いや、ぐるぐると同じところをまわっているのか。今度は龍山寺(ロンサンスー)に行ってみた。いつでも人であふれている台北の龍山寺とは真逆の静けさ。参拝に訪れる人も数えるほどしかいない。静かでゆったりとした空気がここにも漂っていた。ひょいと寺の脇の路地をのぞくと、花嫁さんが結婚写真のポーズを取っている最中だった。未来の旦那様と手をつなぎ、恥ずかしそうにうつむく姿が微笑ましい。まぶしく見えたのは、真っ白なウェディングドレスが紅色のレンガによく映えていたせいだけでもないだろう。私もなんだか清々しい気持ちになり、龍山寺を後にした。
そして、かつての建築様式のまま残る意樓(イーロウ)をまわって別の路地、九曲巷(ジゥチュシィァン)へ。どこも似たようなレンガ敷の細い路地が続く。まるで遠い昔の街に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥る。
春先とはいえ風が冷たい。海が近いせいか風も強い。そしてふと思う。この細く狭い道は風をよけるために先人が考え出した知恵なのではないだろうか。大通りを避け路地へ入りこめば、上から温かな陽差しが差し込み心地よい春の昼下がりを感じることができた。
そして陽が傾きかけてきたころ、またぐるぐると路地をまわって今朝降りたバス停へと急いだ。
【ミニコラム① ココも行きたい!】
●彰化火車站の扇型車庫
彰化火車站(彰化客運彰化站)バス停下車。
彰化火車站敷地内にある台湾で唯一、現役で活躍する扇型の車庫。ここではSLやディーゼル機関車、電気機関車などが移動する様子を見ることができる。鉄道ファンじゃない人でも、一見の価値あり!
【見学時間】13時〜16時(土日10時〜)
【定休日】月
【料金】無料
ホームページ
●八卦山大佛風景區
文化局(八卦山大佛風景區)バス停下車。
小高い丘の頂上に鎮座する、高さ22メートルの釈迦牟尼大仏は、彰化縣(ジャンファーシィェン)のシンボル的存在。風景區内は公園のようになっていて市民の憩いの場でもある。展望デッキからは彰化市街が一望できる。
【ミニコラム② さらに行きたい!】
●ミニバスで台中へ
中鹿客運のiBus「9018鹿港總站-干城台中後火車站」線に乗車すれば、高速道路を経由し、1時間ほどで台鐵台中車站にアクセスできる。途中、台中市内中央を走る臺灣大道を縦走するので、快捷巴士BRTと肩を並べて走るのもバス好きにはたまらない。また、台中の人気スポット科博館や勤美誠品緑園道、草悟道、20號倉庫などを通るので途中下車して観光してみるのもおもしろい。
【乗り場】中鹿客運・鹿港總站(民權路と介壽路三段の交差点角)
【乗車区間】鹿港總站→綠川西站(95元)
【所要時間】約60分