【バス旅DATA】
路線:台灣好行 皇冠北海岸線(捷運淡水站-龜吼漁港)
乗車ルート・運賃:捷運淡水站→金山(老街) 160元(1日券 ※乗り降り自由)
乗車時間:1日(観光時間含む)
※運航時間・運賃・路線は変更される場合があります。
【バス旅ポイント】
【バス旅ポイント】
①バスから眺める海岸線がきれい!
②『朱銘美術館』は圧巻!
③金山老街では鴨肉を食べるべし!
④バスの本数が少ない&終バスが早いので、時間には注意!
⇒ 台北市バスの概要
1日券で乗り降り自由な海岸線を走るバス旅へ
台灣好行の皇冠北海岸線は、新北市にある台湾の最北端の海岸線を走る台湾人にも人気の観光路線バスだ。通常の路線バスではないけれど、添乗員付きツアーバスとは違い1日券を買えば途中の乗り降りも自由。台北市からひと足伸ばしてのバス旅にはピッタリ、ということで乗ってみることにした。
台北の出発点はMRT淡水站。MRTで淡水站に行き、2番改札口に隣接する観光案内所(9時〜18時)へ。台灣好行のパンフレットのほか、目に付く数枚のパンフレットを手に取り、バス乗り場を探す。カフェのMr.BrownやドラックストアCOSMEDの前あたりの、MRT出口から一番遠いところに、バス乗り場があった。2015年8月の改定で、台灣好行のバスは台北市ー基隆市の直行便はなくなった。もし時間が許すなら、基隆にも立ち寄ろうと思っていたが、まぁ行きたくなったら途中で乗り換えればいいか。などと思いながらバスを待つ。
天気は快晴、気温も上昇。日中は32度の予報。台灣好行のバスは台北市内を走る通常のバスよりも小さいミニバス。このタイプのバスに酔いやすい私は、ちょっと不安だったけど、いざとなったら途中下車すれば、なんとかなるだろうとお気楽モードに。バスが到着すると、運転手が降りてきて出発準備のためプレートを入れ替えた。このバスは通常路線と兼用で使われているらしい。準備も終わり乗車し、パンフレットにあった1日乗車券(160元)を運転手から車中で購入。悠遊カードも使えるので、行き先によっては悠遊カードの方がお得な場合もあるが、途中下車が多いなら1日乗車券がお得。後から乗ってきた台湾人のおばさんグループやシンガポールからきた1人旅の男性が、運転手に悠遊カードと1日乗車券のどちらが得なのか、しきりに聞いていた。
青い空と白いビーチ。潮風が気持ちいい白沙灣
10時に出発。淡水のにぎやかな街を通り抜け、どんどん郊外へ。赤ちゃんを抱っこした買い物中のお母さんが歩いているのが見え、快晴の空と共に長閑さを感じながら街を通り過ぎた。海が見える景色に入り、そして山へのくねり道へ。そしてまた海沿いの道へ戻り、小さな田舎のバス停を目にしながら、最初の目的地、北館風景區管理處(白沙灣)バス亭で下車。
広い道路の反対側に『観航寺(グアンハンスー)』の鮮やかな門。それを目がけて道路を渡る。まずは海の方へ。潮風が気持ちいい〜! 北館風景區管理處へトイレ休憩+見学。トイレも清潔でひと息つくにはいいところ。白沙灣(バイシャワン)は5月〜10月がシーズン。白い砂浜の海をゆ〜くり眺めた後、『観航寺』にちらっと寄り、脇道から大通りへ。その短い通りには、魚の絵が描かれた壁があり、海辺の街を感じさせる。
道路に出ると「石花凍」と書かれた看板の『淑女店』というお店が目に入った。気になったので入ってみることに。あとで分かったが、「石花」は、ところてんのテングサのこと。日本のそれとは食べ方が違って、タピオカミルクティーのようにストローで飲む。レモンが少し入っているので、酸味が効いていて爽やかな味。身体の火照りがスーッと引いて、暑い季節にはピッタリの飲み物だ。
『朱銘美術館』の作品に圧倒され大問題が発生!
1時間ほど白沙灣とその周辺を楽しみ、再びバスに乗り込む。バスは海岸線を走ったあと、また山道へ。『鄧麗君(テレサ・テン)紀念墓園』のある筠園(ジュンユェン)を通り過ぎる。日本でも活躍した台湾出身の歌手、テレサ・テンは、1995年5月8日、タイ・チェンマイのホテルで喘息の発作により42歳で急死。遺体は台湾に移送された。台湾の名のある墓園が次々に土地の提供を申し出たが、遺族が最後に選んだ土地がここだった。筠園は、テレサ・テンの本名からとったものなのだそう。
今でも多くの日本人ファンがこの墓園を訪れるとのこと。立派な、そして少し神秘的な墓園を車窓から眺め、次の朱銘美術館バス停で降りた。2016年2月にリニューアルオープンした『朱銘美術館 JUMIN MUSEUM』(新北市金山區西勢湖2号)へ向かうためだ。
近代的でおしゃれな建物は、外観を見ただけでワクワク。館内はとても静かで、アート鑑賞をする絶好の雰囲気がただよっている。朱銘(シュミン)氏は台湾ではとても有名な彫刻家であり、芸術家だ。総面積約4万4500平方メートルという広大な敷地の内、現在約3万2000平方メートルを開放し、その中に彼のつくり出した素晴らしい作品が点在する。まずはスーベニールショップをサラッと見て、地下へ続く階段を降りる。そこにあったのは不定期に入れ変わる台湾人アーティストの作品の数々。扉を開けると落下傘部隊の彫刻がお出迎え。
建物を出て奥へ進むと、先ほど館内で見た陸軍の等身大の彫刻が。これは圧巻! 芝生の上で整列している姿がある。その手前には朱銘氏の息子、朱雋(シュシュン)氏の作品が存在感強く配置されていた。
朱雋氏はファスナーの形を題材にした作品が中心。銅やステンレススチールの素材でつくられている。朱銘美術館は屋外の敷地にも多くの作品を展示。朱銘氏は「人生最大の作品はこの朱銘美術館だ」と明言している。彼の作品「人間シリーズ」のひとつである空軍、陸軍、海軍をモチーフにした彫刻は、ひときわ印象的だった。台湾では、1993年生まれを最後に徴兵制度は廃止になるが、徴兵という制度が身近にある人間ならではの作品だと感じた。
さらに奥へと進むと子供向けにつくられたチルドレンアートセンターのカラフルな建物が見えてきた。子供たちと一緒に来るならここでゆっくり遊ばせられるし、夫婦のどちらかが子供の面倒を見て、交代でアートを楽しむのもありだ。緩やかな坂の脇には兵士たちの彫刻。それを下ると広い芝生の広場に着く。真ん中に太極拳シリーズの巨大な彫刻「太極拱門」。そしてその周りにも太極拳シリーズが続き、このシリーズの要の「單鞭下勢」が。これらの彫刻にはとても圧倒された。橋を渡り、スケールの大きな海軍の船や本館の展示へと続く。あまりにもインパクトの強い作品たちを夢中で見ていたら、大問題発生! 次のバスの時間がとっくに過ぎてしまった。次の目的地、金山老街(ジンシャンラオジェ)へは日が暮れないうちに行きたいが、次のバスを待っていると予定が大幅に狂ってしまう。仕方なく、この本のコンセプトを無視して、レセプションでタクシーを手配してもらった。
名物の鴨肉料理を食べつつ老街を散策
タクシーでの移動は予定外のハプニング。「素晴らし過ぎる作品がいけないんだ」と、心の中で自分にいいわけ&時間配分には注意しなきゃと、深く反省……。金山老街までは約30分弱。料金も乗ってすぐに確認したら、250元と思ったよりも安かった。
「いつも行列ができる肉まんのおいしい店があるよ」とタクシーの運転手が教えてくれたので、金山に着いたら、まずその店に行ってみた。すると「本日売り切れ」と「定休日(第1・第3水曜)」の立て看板が……。シャッターが半分開いていたので覗いてみたが誰もいない。隣の店の人が顔を出したので聞いてみた。どうも今日はお休みらしい。あ〜残念。タクシー乗車の罰があたったのかも。気持ちを切り替え、老街の中を散策することにした。
この金山地区は温泉施設があることでも有名だが、今回の目的は金山老街。週末は多くの人でにぎわうが、この日は平日だったので人もまばらで歩きやすい。あちこちでサツマイモ売りを見かける。そう、ここはサツマイモの産地でもあるのだ。お酢や杏仁豆腐、石けんの切り売りなどもある。中心にある「廣安宮」の軒先に長蛇の列を発見! 金山老街で有名な鴨肉屋だ。ここで注文したものを何軒か先にあるテーブルでいただくのだが、あまりの行列に並んで待つ気になれず、歩きながら食べることに。3球で35元や70元のアイスクリームもあった。台湾らしくタロイモやパッションフルーツ、台湾の離島・澎湖島(ポンフーダオ)が有名な仙人掌(サボテン)味もある。鴨肉を食べていたし、ボリュームもあったから、今回はパスしたけど、次はトライしてみたい。
金山近海で獲れた魚を干して辛味を付けた「阿孟小魚干(アーモンシャオユーガン)」が売られていたので、小辣(少し辛い)をお土産に買った。小辣は試食しただけでかなり辛かったので、中辣や大辣は相当辛そうだ。観光客だけでなく、台湾の地方から、そして地元客もよく足を運ぶ金山老街のお店は、絶妙なタイミングの声かけや試食など、商売上手な人が多いと感じた。老街入口の華やかな「慈護宮」のお宮を通り過ぎバス停へと向かった。
運転手さんのおかげでバスの中はほのぼのムード
皇冠北海岸線の最終バスは夕方と、時間が早い。美術館での失敗を繰り返さないよう、時間をしっかり計算する。
バスの到着時間まで少し余裕があったので、ふと見つけた雑貨屋『達利行』(新北市金山區金美中山路174号)にちらっと寄ってみた。店頭には店主らしき女性が、こっくりこっくりと気持ちよさそうに居眠りをしていたので、起こさないように店の中へ。中では息子さんらしき人が笑顔で迎えてくれた。ストローバッグがかわいらしかった。
台湾人といえばフレンドリーな国民性で有名だ。帰りはその典型のような人物が運転するバスに乗り込むことになった。偶然だったが、朝乗った時に一緒だったシンガポールから来た1人旅の男性とまた会った。お互いに気づき会釈をする。彼は運転席のすぐ斜め後ろに座り、私は真ん中よりも少し後ろの席に座った。運転手は後ろ寄りの私たちにもクリアーに聞こえる大きな声で、その男性と話はじめた。楽しそうに話がはずむ。朝は晴れていた空だったが、今は雲行きが怪しくなってきた。でもバスの中は運転手さんのおかげで、陽気な雰囲気に。
シンガポールの男性は野柳地質公園で今日の大半を過ごしたらしい。運転手は、シンガポールから台湾までの飛行機代はいくらだったのか? だとか、台湾ではどこへ行ったのか? など次々に質問し、おすすめの場所なども教えていた。ついには「台湾人は親切が過ぎるときがある、熱心過ぎるんだよね」。と言い出し、私も後ろで思わず笑顔で頷いてしまった。途中、別の乗客が「足がかゆい」と言いだすと、すぐ後ろに座っていた台湾人が、かゆみ止めの薬を貸してあげたりと、心温まる場面を見ながらバスは出発地点の淡水站に向かって、夕暮れの海岸沿いを走っていく。