「歩く台北2019年度版」の特別企画として、2018年の3月に台湾で初めて発表された第1回台北ミシュランで栄えある星を獲得した20軒のレストランのうち、中華料理系のお店をドーンと紹介していこー、ということで、ここ一週間で一気に4軒!も★付き店を取材してしまいました!
胃はさすがにモタレ気味になりましたが、シェフや関係者たちに星をゲットした経緯やその後のお店の盛況についての話を聞いているうちに、台湾にも内なる「ミシュラン効果」が湧きおこっていることに気づきました。さて、一軒ずつお店や料理をご案内する前に、星をゲットしたお店のそれぞれの思いなどをまとめてみます。
今回、取材対象にした7軒のうち4店はホテル内、3店は街場の店だったのですが、星をゲットした後、ひっきりなしに取材が入るためか、店によっては「取材お断り」だったり「写真提供のみ」だったので、写真提供だけの一部の店は、評判を聞いての紹介になりますのであしからず。印象としては創作中華、台湾家庭料理、広東料理に星が集中した、というイメージです。
ホテル系 4店
★★★ 頤宮 → 君品酒店(広東創作中華)
★★ 請客樓 → 来来喜來登(四川・揚州)
★ 雅閣 → 東方文華酒店(広東料理)
★ 天香樓 → 台北亞都麗緻飯店(杭州料理)
家族経営系3店
★ 大三元酒樓(広東料理)
★ 金蓬莱餐廳(台湾料理)
★ 明福餐廳(台湾料理)
うち大三元、金蓬莱などの家族経営の店では、どちらもコアにいるマネージャーさんに日本語が堪能な人がいるため、注文の時も心配はいりませんし、日本語のメニューがある店もあります。ちなみに、予約状況は、ホテル系であれば2ー3ヶ月待ちという店もあるので、お早めに計画してもらうか、なるべく平日を狙う、という工夫が必要です。そしてもちろん300人くらい収容できる店は予約しやすいということは勿論ですが、比較的家族経営のお店は(日本人客には?) 融通を利かせてくれることもあるようです。
一食め 大三元酒樓
店頭には「祝ミシュラン星獲得」の赤い立て看板。迎えてくれたのは日本留学経験もある呉小姐。ここでしか味わえないパパイヤボートにのったグラタン、ロブスターの料理などをいただきまた。星獲得後はたいへんな賑わいで、予約をさばくのも大変だったようですが、夏先に入り、ようやく落ち着いてきたということです。現在は平日なら比較的に予約は入りやすいですが、週末なら1ー2週待ち、というところでしょうか。3階の個室を改装中で、さらなるサービス向上を目指しています。
二食め 来来シェラトンホテル 辰園
PRとの電話「2つ星の請客樓はずっと3ヶ月先まで予約が詰まっててんてこまい。取材に不備があることにもシェフが難色を示しているので、写真提供で勘弁してもらいたい、そのかわり、参考店としてミシュラン本誌に紹介された「辰園」の料理をご案内します」との経緯で、この広東料理店で飲茶料理に囲まれ、子豚の肉のクリスピーな美味しさに目を細めながら、2つ星「請客樓」の料理についてもお話を聞きました。
三食め 東方文華ホテル 雅閣
5つ星ホテルのミシュラン1つ星。この取材を通してここがヤマ場と感じ、美食家4人で期待を胸に入りました。さすがだったのがインテリアを担当したデザイナーからしてその世界のトップクラス。たくさんのストゥーパを形どったオブジェや骨董茶器のディスプレー、席に座るまでが異次元空間。出てくる料理も一同いちいち「ワァー」と声がでるくらい、サプライズのある凝らし方、キャビア、カラスミなど使う食材の数々に「非日常」を感じる、楽しい時間でした。ミシュランを獲った後には特別コースも設定。星付きの常連として君臨する構えでした。
四食め 金蓬莱
場所は天母という住宅エリアだったので、心の中では「チョイ遠いなぁ。。」と思いつつ、改装中(2018年10月完成予定)の店舗ではなく、隣接する一人鍋店のほうで、日本語ができるリリーさんとオーナーシェフのお兄さんにお話をうかがいました(詳細は本文後半)。ここで創作も伝統料理もふくめた台湾料理の奥深さにノックアウトされることになりました。言ってみれば「台湾料理」とはふだん使いの自助餐廳のお弁当ランクから屋台風料理までピンキリで、いいところ欣葉に行くことで「台湾料理は極まった」という気がしていましたが、間違いでした。金蓬莱は全てが繊細。しかも心がこもっていたのです。
ミシュラン主催受賞パーティーでのウラ話。。
それぞれの店での受賞の時の喜びを語ってもらいました。東方文華(マンダリンオリエンタル)グループはすでに全世界で15★も獲っているせいか、余裕の様子だったようですが、それでも3★2★ではなく星ひとつだけ、というのがやや残念だったようで、シェフ長は会場でガッカリした表情だったとのこと。。さすが★つきありき!のモチベーションで動いているマンダリンオリエンタルホテルならではの反応だったかと。そしてPRさんもハッキリと「来年は2★以上!」と張り切っていました。
大三元さんはパーティーの招待状と電話が入り、ちょっとビックリしたそう。誰が参加しようか、大わらわだったようです。金蓬莱シェフは余裕そのもので「まあ連絡あった時点で星は確定したな、とは思ってたよ。でも街場の中華店で星2つはムリだと分かってたから、星ひとつだろうな、とは予想していました」と冷静に分析していました。
「街場の中華料理店は日本のミシュランで3つ星をとるようなコンパクトなシステムになっていない。宴会もしなくちゃいけない規模が必要だし、キッチンも大きくなくてはいけないし、3つ星もらえるような完璧さは求めないんです。ホテルは違います。そのサービス、インテリア、快適さ、キッチンがどうなっているか、食事をとりまく全てが加味されて★2つ→3つと評価が決まってくる。それを考えると、我々は★をひとつもらうだけで十分だと思ってます」金蓬莱シェフは仲間とミシュラン談義になることも多いためか、内情をよく分かっているようでした。
台北ミシュランがあたえた「ファーストインパクト」
金蓬莱シェフの話は続く。「今、多くのシェフの卵が目指しているのは和食の世界です。トレンドですし、伸びしろがあると思っているんでしょう。確かに和食店は一般的に高付加価値があるし、そういう時代です。だから台湾料理店は最近はあまり脚光を浴びてこなかった。弟子も育っていない。基本が家庭料理ですし、ほかの中華と比べて地味な世界なんです。が「金蓬莱」がミシュランの星を獲ることで得たものは、誇りにもつながりましたが、ウチ含む多くの中華料理界の子弟たちにいい刺激を与えたと思うんです。今後もクオリティを落とさないように努力もするし、ウチはいい意味でチームがまとまってきたと思います」
なによりお客さんにいちばん美味しいものを食べてもらうことを第一義に思っているシェフに意地悪な質問をしてみた。「台湾料理店のトップを走っているのはチェーン展開もしている「欣葉」さんなんですが。。金蓬莱さんは支店もなく、本店の味を守っています。何が違うのでしょう?」するとシェフは相変わらずの冷静な表情で淡々と話してくれました。「欣葉」はマーケティングの妙です。全てのチェーン店は同じ。要は『お金儲け』に走るのか、『味』を追求するのか、のポリシーの違いです」とこれまた鋭い。
グルメなら、オーナーシェフのいるオンリーワンの店を狙え。
つまり「金蓬莱」は味を追求したからこそ、1つ星を獲得できた、ということを滲ませる話。ミシュランはそんなところまで評価しているのか。確かに、星を獲得したレストランにチェーン店はひとつも入っていない。唯一「大三元」が日本・福岡にわずか2年前に支店をひとつ出しているのみだ。基本的に本店の味は守られている。
小龍包大手チェーン「鼎泰豊」も星は獲得できなかった。当然、星を期待はしていただろう。しかしチェーン店が陥りがちな、どこか抜け落ちたレストランとしての「本質」を、ジャッジする編集者たちは感じ取ったのだろう。
チェーン店「欣葉」はナンバーワンであるはずの自分の店が星をとれず、オンリーワンの一軒家食堂が星をゲットしたことに相当ショックを受けたらしい。その後、星をとった「金蓬莱」には2度もお忍びで関係者が食べに来て、詳細にチェックしていったという。
ミシュラン獲得店に客やレストラン関係者が集中することで、名物料理のレシピが真似される、という現象も起こるようだが、それも台湾のレストラン業界にとっては全体的な底上げになってよいことなのかも、と感じた。
中国語(英語解説付き)で出版されているミシュラン本誌をペラペラとめくってみると、星付きも参考店も混じり、エリア別に紹介されており、屋台料理あり、夜市ありの全体的には雑多な印象。どことなく読みにくいレストランガイドに見えたが、評価基準には独特のポリシーをもっていることは星付き店を訪ねるごとに伝わってきた。
★ 上記の7店は今後「歩く台北ブログ」内で取材記事が紹介されるほか、中華店、和食店はアプリ利用で予約も可能になります。お楽しみ。
中華店以外のカテゴリー別 星ゲット店リスト
和食系 5(祥雲龍吟のみ2★ほかは1★)
祥雲龍吟 TEL 02-8501-5808
謙安和 TEL 02-2700-8128
吉兆 TEL 02-2771-1020
鮨野村 TEL 02-2707-7518
鮨隆 TEL 02-2581-8380
フランス料理 5店 (全て1星)
L’ATELIER de Joël Robuchon / La Cocotte by Fabien Vergé / RAV / Tairroir態芮 / MUME
その他 3店 (全て1星)
大椀(焼肉) / 教父牛排(ステーキ) / Longtail (餐酒館)
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